1967年にスチュアート・ローゼンバーグ監督によって公開されたアメリカ映画「暴力脱獄」(原題:Cool Hand Luke)は、実存主義のテーマが深く響く作品です。主演ポールニューマン。
フロリダの刑務所を舞台に、ポール・ニューマン演じるルーク・ジャクソンという男が社会のシステムに取り込まれることを拒否し、闘う囚人『ルーク・ジャクソン』の物語。
抑圧的なシステムに対する抵抗と個人の象徴となる物語が描かれています。
この映画のテーマ『実存主義』を理解するためには、「実存主義の哲学」と「ルークの心」を探求することが必要です!
筆者紹介
カラマーゾフの兄弟を読んでからイワンに憧れ、エセ実存主義を日々体現。ピーナッツではスパイクに愛情を注ぐ。
実存主義とは?
実存主義は、19世紀から20世紀にかけて登場した哲学運動であり、キルケゴール、ニーチェ、サルトル、カミュなどの思想家がその代表。
実存主義の中心には、個人が自由であり、意味のない無意味な世界で自らの意味を創造する責任があるという考えがあります。
めちゃくちゃ簡単に説明するなら
人、一人一人の存在を大切にしていき、個人としての立場を強調していこうとする考え方のこと。
自由、選択、疎外、そして不条理の探求が主要なテーマです。
ルーク・ジャクソン:実存的ヒーロー
主人公であるルーク・ジャクソンは、その行動と態度を通じて実存的ヒーローをまさしく体現しています。
- 権威への反逆
ルークの度重なる脱獄の試みは、強制された構造と権威に対する拒否を象徴しています。実存主義的には、彼は社会から押し付けられた役割や意味を受け入れません。 - 意味の探求
ルークの行動、反抗的な笑顔や順応を拒む姿勢は、個人的な意味の探求を反映しています。他の囚人たちが運命を受け入れるのとは対照的に、ルークは絶えず状況に疑問を投げかけ、挑戦します。 - 疎外
映画全体を通じて、ルークは深い疎外感を経験します。これは彼の母親との緊張関係や刑務所内での孤立に現れています。実存主義は、個人が本物の探求においてしばしば孤立を感じると説きます。 - 不条理
「コミュニケーションの失敗」という有名なセリフは、人間存在の不条理を強調しています。刑務所の儀式や規則は恣意的で意味をなさず、不条理な世界観を映し出しています。 - 自由と選択
ルークは、深刻な結果をもたらす場合でも、自らの選択を通じて個人の自由を主張し続けます。彼の最終的な反抗行為は悲劇的であるものの、個人の自由への揺るぎないコミットメントの証です。
主要シーンにおける実存的テーマ
- 卵を食べるコンテスト
このシーンは実存主義の強力なメタファーです。50個の卵を食べるというルークの決断は不条理でありながら、純粋な意志と反抗の行為です。意味のない挑戦においても、彼の個性の主張と意味の探求を示しています。 - ルークの最期の瞬間
教会で追い詰められたルークが神に語りかけ、自らの苦しみの目的を問いかけるクライマックスシーンは、実存的危機を象徴しています。彼は宇宙の沈黙と神、そして内在的な意味の欠如に直面しています。
影響と遺産
「暴力脱獄」は、実存主義のテーマを通じて人間の条件を深く探求しています。
ルーク・ジャクソンのキャラクターは、自由と意味の探求における実存的反抗の永続的な象徴です。
この映画は、視聴者に対して自らの人生、選択、不条理な存在をどのように乗り越えるかを考えさせる挑戦を投げかけています。
結論として、「暴力脱獄」は単なる刑務所ドラマではなく、実存主義哲学の映画的反映です。ルークの旅を通じて、自由、意味の探求、不条理との闘いという人間存在の核心に迫る今なお色褪せない名作です。
でも邦題が「暴力脱獄」。
この邦題付けた方…、ぜったい観てねぇ!そんな『ヒドイ邦題No.1』で有名タイトルです。
『cool hand』には『最高の手札』や『ハッタリ』なんかの意味あいがあるみたいです。
(なんだ!暴力脱獄て!)
2つの名言
●What we've got here is a failure to communicate. /「意思の疎通が欠けてたようだ」
所長のセリフ。分かりやすく訳すなら「こいつ、全く話が通じやがらねぇ!」って感じです。
ルークの曲がらない強さが表されています。
余談ですがこのセリフ、アメリカのモンスターバンドGuns N' RosesのUse Your Illusion IIの収録曲civil warの冒頭にサンプリングされていることで有名。名曲。シビルウォーは漫画スティール・ボール・ランにも出てきますね。
あとはアメリカ映画協会の選ぶ名台詞ベスト100の11位です。11位て!
➤シビル・ウォー、聴いてみてください。昔は分からなかったけれど、大人になってから沁みる…。
名曲ですね。
●Sometimes nothin' can be a real cool hand. /「時にはなんにも持ってないやつが一番強いのさ」
ポーカーにブラフで買った時に言います。これが「クールハンド・ルーク」のニックネームの由来。
ブタで勝つとか承太郎かよ!ウォー!と盛り上がります。
世界最年少の実存主義者「チャーリー・ブラウン」
そう、彼を忘れてはいけません!
ザ・実存主義者代表といえば『ピーナッツ』の主人公チャーリー・ブラウンです。
あのスヌーピーの飼い主であるチャーリーブラウンは「世界最年少の実存主義者」の通り名を持っています。
チャーリーは幼いながらも「人生ってやつは自分の思う通りになんかならない。辛いことばかりが起こる。」という現実を理解しています。
野球やったらほとんど負ける、ピクニックに行けば雨が降る。
スケートをやった日になんかにゃ猛スピードでスヌーピーにはねられる etc etc...
(なんだか泣けてきますね…。)
しかし、さすがはチャーリー!何度ひどい目にあっても、決して挫けたり投げ出したりせず前向きに生きるその姿から、多くの人々に愛され続けています。
赤毛の女の子からラブレターの返事がなくても挫けません。
そう、彼は強い…!
おわりに
ルークやチャーリーの生き方から学ぶべきは
「人生の厳しさ、困難な状況に相対した時、決して挫けず立ち向かうことの大切さ」だと思います。
闘い続ける限りはまだ負けてない!
でも矛盾するようですが、限界来る前に『逃げ』ましょうね!
逃げる事は自分を守る為の『とっておき』の伝統的な戦法です!
(有名な人が昔に言ってました!)
柔軟に。自分を大切に!頑張っていきましょう!٩( 'ω' )و
最後まで読んでいただきありがとうございました!
(まだ未観の方は、ぜひこの機会に観てみてください!グッときますよ。)
(お供にゆでたまご50コもどうぞ。いらないですか。)